特集:深化するリベラルアーツ—「完成期」における教養教育

立教大学

2017/11/24

トピックス

OVERVIEW

2016年度より、新しい学びのスタイル「RIKKYO Learning Style」がスタートしました。4年間を「導入期」「形成期」「完成期」に分け、学生一人一人の成長に寄り添い、段階的に学びを深めることを促します。今号では、学生生活の総括となる「完成期」における教養教育に着目し、立教大学のリベラルアーツ教育のいまをご紹介します。

全体を俯瞰し、自らの足場を見つめ直す「完成期」

真の「教養人」になるために

総長 吉岡 知哉

複雑に絡み合った地球規模の課題が山積し、絶え間なく変化し続ける現代社会の中で、高等教育におけるリベラルアーツ教育の重要性に改めて注目が集まっています。本学においても、2016年度に新しい学びのスタイル「RIKKYO Learning Style」を導入し、創立時からの柱であるリベラルアーツ教育をさらに深化させた学びの形をスタートしました。
「RIKKYO Learning Style」では、4年間を「導入期」(1年次春学期)、「形成期」(1年次秋〜2年次秋学期)、「完成期」(3年次春〜4年次秋学期)の3段階に分け、段階的に学びを深める仕組みを取り入れました。2018年度には2016年度入学生が3年次になり、初の「完成期」を迎えることになります。「導入期」で幅広い教養に触れて学びの土台をつくり、「形成期」でさまざまな経験を重ね、専門の学びに入っていく。そして「完成期」は、専門を基盤に教養を深め、知全体における自らの専門性の位置付けを客観的に捉え直すプロセスです。
立教大学は「専門性に立つ教養人の育成」という教育目標を掲げていますが、ここでいう教養人とは、単に豊富な知識を持つ「物知り」を意味するものではありません。専門という核を持った上で、知識を相互に関連付け、俯瞰的に考えることができる人こそが真の教養人です。専門を軸として、世の中を見たときにどう見えるか。自分が得た知識や技能が、社会の中でどういう意味を持っているか。学んだことを相対化し、断片的な知識を体系的な知へと構造化していく過程が「完成期」なのです。

異分野の学生が集う「立教ゼミナール発展編」

具体的な取り組みとして、「完成期」の3・4年次生の履修を推奨する「立教ゼミナール発展編」という科目を全学共通科目に新たに設置しました。これは複数の分野にまたがる学際的な問題に取り組む少人数のゼミナールで、科目・テーマは教員からの公募によって決定します。2017年度は、旧カリキュラムを学んできた3・4年次生と新カリキュラムの1・2年次生に向けて18科目を開講しています。
特徴的なのは、専門を学んだ異なる学部の学生が集まり、分野横断的な問題に取り組む点です。簡単に答えの出ない問題についてそれぞれの見地から議論することで、お互いに新鮮な発見があり、自身の専門的思考や社会における役割を見つめ直す契機となるでしょう。同時に、こうした異分野交流・協働は教員にとっても大きな刺激になります。異なる学部生同士、学生・教員同士が良い意味で挑発し合い、思考の基盤を揺さぶられる、活発な化学反応が起こる場になればと考えています。
さらに、このプロセスを通して、取り組む問題そのものについても今までにない視点が得られるはずです。現代では学問分野が高度に専門化・細分化し、旧来の意識のままでは学問が先に進まなくなっています。しかし、最先端の分野ほど他の分野への越境が進んでいます。異分野を学ぶ学生と協働する経験が、狭い専門性にとらわれない広い視野と柔軟な思考を育み、学問それ自身の進歩へとつながっていくでしょう。

統括的な視点を持つ、自立した人物を育てる

リベラルアーツは古代ギリシャ・ローマ以来の学問の基礎的技法ですが、その成立当初から、「あらゆる専門分野の礎となる知識や教養」でありながら、「世界の仕組みを解読し、自らの位置と役割を認識するもの」という二つの面を持っています。「完成期」が目指すのはまさに後者の意味におけるリベラルアーツであり、それこそが複雑化する現代に求められているものにもなります。専門という足場にしっかりと立ち、全体を俯瞰・統合する力を持つ自立した人物を育成するため、立教大学はこれからもリベラルアーツ教育を追求し続けていきたいと思います。

学びの身体化、そして自らを成長させるきっかけに

全学共通カリキュラム運営センター部長 佐々木 一也

全学共通科目総合系科目の学修目的は、低学年で専門知識を高く積むための広く大きな土台を形成するだけでなく、身に付けた専門知識の広い応用力を涵養するために他分野との交流経験を積むことにもあります。「RIKKYO Learning Style」が導入されて、総合系科目でも完成期に特化した科目設置が可能になり、3、4年次生向けに「立教ゼミナール発展編」が開講されました。本来、学際的内容を持つ総合系科目ですが、あるテーマを巡って受講生同士が専門性の交流をしたり、大学外に出て多方面の専門性が融合して機能する現場に立ち会ったりして、学んだ専門性の有効性を実感すると同時に、それを相対化する視点も獲得できます。この経験が学生の学びを身体化させ、「専門性に立つ教養人」へと自らを成長させるきっかけとなることが期待されています。

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