公開講演会「読みながら遊ぶこと—遊び文化の一環としての日本近世文学」
INFORMATION
遊び文化が盛んだった江戸時代。手遊び・身体的遊び・頭脳的遊び・社交的遊びなどが普及していく中、「遊び物」が出版文化にまで浸透していく。そこから生み出されたのは、複雑な「エコシステム」(生態系)の一つである。このエコシステムの一つの特徴は、本来文学の領域に入り難い出版物が、「文学性」が認められる書籍と交わることである。モレッティ教授による講演では、遊び文化を吸収した近世の書籍文化を考察し、「読む」という行為と「遊ぶ」という行為を同時に可能にする一次資料に焦点を当てる。「あてもの」の一つである「目附絵」が、物語性を重視する十九世紀の「合巻」の中に取り混ぜられると、どのような「読み物」が生まれたのか。子供向けのボードゲームである「十六武蔵」が、曲亭馬琴の大人向けの「黄表紙」の絵と文の中に登場すると、どのようなテキストが生じたのか。頓知を試す「謎々」の戯れとそのロジックを活かす書物には、いかなる物があったのか。以上の三つの事例を検証しながら、「読む」という行為と文学研究の領域を新たな視点から考慮する。以上の講演をうけ、歴史学と現代思想研究の立場から応答し、その後質疑応答を行う。
講師
ケンブリッジ大学東アジア・中東学部教授
ラウラ・モレッティ 氏
PhD(日本研究、カ・フォスカリ大学)を取得。同大学、英国ニューカッスル大学で教鞭を執ったのち、2012年、ケンブリッジ大学エマニュエル・カレッジにフェローならびに専任講師として着任。2017年准教授を経て2022年教授。2016-19年、本学文学部客員准教授。専門は、近世日本の大衆文学・文化であり、文学、美術史、文献史、テクスト研究、古文書学を交差する学際的研究にも定評がある。著書はRecasting the Past: An Early Modern Tales of Ise for Children(Brill, 2016), Pleasure in Profit: Popular Prose in Seventeenth-Century Japan(Columbia UP, 2020)他多数。
本学文学部史学科日本史学専修教授、日本学研究所所長、学院史資料センター副所長
佐藤 雄基
博士(文学、東京大学)。専門は日本中世史・古文書学・史学史。著作に『御成敗式目ハンドブック』(神野潔と共編、吉川弘文館、2024)『御成敗式目:鎌倉時代の法と武士』(中公新書、2023)、『明治が歴史になったとき:史学史としての大久保利謙』(編著、勉誠出版、2020)他多数。
本学文学部文学科文芸・思想専修教授
渡名喜 庸哲
PhD(文学、パリ第7大学)。専門は現代フランス思想。著作に『現代フランス哲学』(筑摩書房、2023)、Levinas et Merleau-Ponty. Le corps et le monde(ed. Hermann, 2023)、『レヴィナスの企て:『全体性と無限』と「人間」の多層性』(勁草書房、2021)他多数。
本学文学部史学科世界史学専修教授、文学部人文研究センター長
小澤 実
専門は西洋中世史・北欧史・史学史。著作にCommunicating Papal Authority in the Middle Ages(ed. Routledge, 2023)、谷口幸男『ルーン文字研究序説』(編、八坂書房、2022)、『史学科の比較史』(佐藤雄基と共編著、勉誠出版、2022)他多数。
司会
本学文学部キリスト教学科准教授
加藤 喜之
PhD(神学、プリンストン神学院)。専門はキリスト教思想史。“A Diagnosis of Cartesian Atheism: Petrus van Mastricht’s Critique of Spinoza’s Theological-PoliticalTreatise, ”(with Kuni Sakamoto), Church History and Religious Culture 103(2023); “Between Cartesianism andOrthodoxy: God and the Problem of Indifference in Christoph Wittich’s Anti-Spinoza”(with Kuni Sakamoto), Intellectual History Review 32-2(2022); Petrus Van Mastricht(1630-1706): Text, Context, and Interpretation(Adrian Neele ed. Vandenhoeck & Ruprecht, 2020)他多数。
詳細情報
名称
内容
18:00~18:05 趣旨説明:小澤実
18:05~18:50 ラウラ・モレッティ氏「読みながら遊ぶこと—遊び文化の一環としての日本近世文学」
19:50~19:10 応答1:佐藤雄基「子どもの学びと御成敗式目—江戸文化の中の鎌倉時代」
19:10~19:30 応答2:渡名喜庸哲「「翼」はwingではない!マンガをめぐる翻訳事情」
19:30~20:00 質疑応答
対象者
申し込み
- 事前申し込み 不要
- 参加費 無料