公開講演会「ガスマスク国家:戦時中の日本の防空、航空、空想空撮」
INFORMATION
講師ジェニファー・ワイゼンフェルド教授は、近代日本の視覚文化とその表象研究を専門とし、関東大震災をはじめとする、日本におけるカタストロフィの視覚と表象研究で名高い。とりわけ近年精力的な研究で注目されるのが、戦時日本における国民防空(民防空)の視覚表現に関する研究である。
本講演会は、ワイゼンフェルド教授の近著『ガスマスク国家』(Gas Mask Nation : Visualizing Civil Air Defense in Wartime Japan, Chicago : University of Chicago Press, 2023)をもとに、第2次世界大戦中の日本における防空、航空、空想の関係について具体的に再検討するものである。
同書の表紙、写真家・堀野正雄による「ガスマスク行進、東京」(1936年東京都写真美術館所蔵)は、防空演習としてガスマスクをつけて都心を行進する女子学生の姿をとらえたもので、1930年代の日本におけるモダニズムの不安な側面を最も象徴的に表すイメージである。子供用の紙製ガスマスクをおまけに付けたキャラメルや防空ファッション、多様な防空商品が象徴するように、不安の中にあってなお、楽しみと驚きの文化が存続し、非常時におけるアンビバレントな欲望をも生み出していた。本講演会では当時の日本の銃後の軍国主義とモダンな大衆文化、社会の総動員化を分析・考察する。
講師
2023年度本学招へい研究員、米国・デューク大学美術・美術史・ヴィジュアルスタディーズ学科教授
ジェニファー・ワイゼンフェルド(Gennifer Weisenfeld) 氏
2023年より、同ウォルター・アネンバーグ・ディスティングイッシュト プロフェッサー。
プリンストン大学でPh.D.(美術史)を取得。近代日本の前衛芸術、広告、デザイン等の視覚文化研究を専門とする。ハーバード大学ライシャワー日本研究所やロンドン大学東洋アフリカ研究科での客員研究員も務めた。
主な著書にMavo : Japanese Artists and the Avant-Garde, 1905-1931. Berkeley, University of California Press, 2002, Imaging Disaster : Tokyo and the Visual Culture of Japan' s Great Earthquake of 1923. Berkeley, University of California Press, 2012(邦訳:篠儀直子訳『関東大震災の想像力:災害と復興の視覚文化論』青土社、2014年)、Gas Mask Nation : Visualizing Civil Air Defense in Wartime Japan(Chicago : University of Chicago Press, 2023). 中村尚明訳「護れ大空!—戦時日本における国民防空の視覚表現」増野恵子他編『もやもや日本近代美術—境界を揺るがす視覚イメージ』勉誠出版2022、391-413頁他多数。