公開講演会「日本近世の生業・暮らしと文化的景観」
INFORMATION
近年では文化財の一つとして、地域における人びとの生活や生業、あるいは自然との相互作用によって形成された景観を「文化的景観」として重視し、その保全を図ろうとする動きがある。単なる自然景観ではなく、人間の活動によって形成された景観を文化的景観と呼ぶなら、それは複数の時代の長期にわたる歴史的経緯が積層して形成されたものであり、地域社会の実態、政治的・経済的動向、社会的権力が及ぼす影響などが反映されたもの、すなわち人びとの生活や暮らしによって作り出されてきたものといえる。さまざまな建築物、道路、耕地、山林、河海などを含む文化的景観は、歴史上、何度も作り直され、塗り替えられてきた。なかでも日本近世においては、全国的に城下町や湊町、在郷町などが整備され、都市の暮らしが形成されると同時に、兵農分離に伴って村落社会のありようが再編された。こうして生まれた町と村の社会構造は、今日の地域社会存立の基層となっており、現在に至る文化的景観の形成に大きな影響を与えていると考えられる。そこで今回の公開講演会では、近世から近代の初頭に対象を絞り、米作地帯、水辺集落、山間村落、湊町などを具体的に取り上げて、生活・生業の変容と景観形成あるいはその変容との関係の諸相を明らかにすることを目指したい。
講師
琉球大学国際地域創造学部教授
武井 弘一(たけい こういち) 氏
東京学芸大学大学院で博士号(教育学)を取得。主要業績に『イワシとニシンの江戸時代』(編著、吉川弘文館、2022年)。
神奈川県立足柄高等学校教諭
桐生 海正(きりゅう かいせい) 氏
東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程修了。主要業績に「宝永の富士山噴火と山間村落の復興」『人民の歴史学』234号、2022年、13-28頁、「小田原藩領における在村炭仲買の流通ネットワーク」小田原近世史研究会編『近世地域史研究の模索』(岩田書院、2022年)、155-193頁。
滋賀県立大学人間文化学部教授
東 幸代(あずま さちよ) 氏
京都大学大学院で博士号(文学)を取得。主要業績に「琵琶湖のヨシ(葭)地をめぐる近世人の自然観」橋本道範編『自然・生業・自然観ー琵琶湖の地域環境史ー』(小さ子社、2022年)、157-179頁。
東京大学大学院工学系研究科特任助教
中尾 俊介(なかお しゅんすけ) 氏
東京大学大学院で博士号(工学)を取得。主要業績に『横浜開港場と内湾社会』(山川出版社、2019年)。
横浜国立大学教育学部教授
多和田 雅保(たわだ まさやす) 氏
東京大学大学院で博士号(文学)を取得。主要業績に『近世信州の穀物流通と地域構造』(山川出版社、2007年)。