公開講演会「第52回現代のラテンアメリカ」
INFORMATION
第1部「今日のラテンアメリカと環境問題—「自然の権利」を中心に—」
従来、人間は法の主体として、司法を通してその権利を保障することが一般的である。その場合、自然は単なる人間の役に立つモノで、人間は資源や風景など、誰にでも健全な環境を守るために、環境法を開発してきた。その過程では自然は法の客体として捉えられ、司法を通してそれを保護してきた。しかし現在、ラテンアメリカにおいては、自然は法の客体から主体に変わって行く動きが顕著にみられるようになっている。具体的には、河川、湖、動物など、そのものの権利を保護するために、直接司法に対して訴訟を起こすことができるようになりつつある。本講演では、エクアドル、ボリビア、コロンビア、ブラジルというラテンアメリカ諸国において、様々な方法で自然の権利が承認されている過程を紹介し、ラテンアメリカにおける自然の権利の進行、あり方、そしてその展望を分析する。
第2部「日伯民法におけるペットの法的地位—動物私法学の構築に向けて—」
日本民法では明治時代から動物はモノとされてきたが、家族同然と考えられるようになったペットをモノとして取り扱うと、さまざまな不都合が起こりうる。これらの問題に対応するために、諸外国においてペットの法的地位を見直す動きが見られる。本講演では離婚後のペットに対する面接交渉権を認めたブラジルの裁判例を通じてブラジルにおける法状況を紹介し、日本の現状と比較検討する。
講師
第1部
ブラジル国弁護士・環境法研究者
Tiago Trentinella(トレンチネラ・チアゴ) 氏
2002年サンパウロ大学法学部(ブラジル)卒業。2003年ブラジル弁護士会入会、法律事務所や社内弁護士として勤務後、2010年大阪大学大学院法学研究科博士前期課程入学、2012年修了。2016年同大学大学院法学研究科博士後期課程修了。2017年大阪大学大学院法学研究科助教。2020年1月より法律事務所Rusch Advogadosに勤務、主に契約、環境法に係る事件を担当。同年5月よりサンパウロ大学法学研究科ポストドクターとして廃棄物に関する研究にも携わる。また大学や高等教育機関でも教鞭をとる〔2021年サンパウロ大学法学部、ジェトゥリオ・ヴァルガス財団(FGV)廃棄物エネルギー回収MBA〕。
第2部
本学法学部特任准教授
Daniel Machado(マシャド・ダニエル)
2014年東京大学法学部卒。2016年東京大学法学政治学研究科修士号取得。2016年東京大学法学政治学研究科博士課程入学。2019年尾中郁夫・家族法新人奨励賞受賞。2020年本学法学部特任准教授(現在)。専門分野は民法学であり、ブラジルやフランスとの比較家族法研究を中心に研究してきた。主要な研究は『ブラジルの同性婚法ー判例による法生成と家族概念の転換』(信山社、2018)。そのほかに日葡英で様々な論文を公表してきた。現在は本学法学部国際ビジネス法学科グローバルコース教員として英語で日本の民法(不法行為法、物権法、比較家族法)を教えている。