公開シンポジウム「天草灘かくれキリシタンの世界:松浦家文書から見た生業、交易、島嶼ネットワーク」
INFORMATION
本シンポジウムは、天草大江を中心に、天草灘に広がるかくれキリシタンの活動を、近世後期から幕末における地域の生活環境並びにグローバルなネットワークの中への位置付けを目的とする。2021年8月に鶴島博和編『肥後国天草郡-町田組・大江組大庄屋松浦家資料集』(刀水書房、2021)が刊行された。本資料集は、現在に伝来する4164点の松浦家文書の中から、かくれキリシタンなどに関わる文書55通及び「転切支丹並類族死失帳」を選別し、翻刻・現代語訳した上で解説を付したものである。これまで十分に利用されてこなかった当該文書を軸に据え、以下の観点で報告と討論を行う。
第一に、地域の視点である。まずは松浦家文書を歴史学、考古学、民俗学など複数のディシプリンで検討することで、近世後期から幕末の天草灘の地域像を明らかにしたい。第二に、比較の視点である。近世におけるかくれキリシタンは地域ごとの特性があるため、平戸など他地域やそれに先行する時代の専門家による報告やコメントを得ることで、今後の比較研究の基礎を得たい。第三に、グローバルな視点である。天草灘は閉じられた地域ではなく、庄屋を通じた幕府との関係、キリシタンネットワーク、島嶼における生業・交易・知の交換といった外部との接触を常に持ち続けていた。そうした中で形成された地域のアイデンティティを、海域アジアやユーラシアの専門家のコメントなども踏まえて明らかにするとともに、それらに対して今を生きる天草の人たちがどのように向き合っているのかもあわせて考えたい。
講師
熊本大学名誉教授
鶴島 博和(つるしま ひろかず) 氏
『バイユーの綴織(タペストリ)を読む—中世のイングランドと環海峡世界』(山川出版社、2015年)他多数
キリシタン研究家
児島 康子(こじま やすこ) 氏
文学博士(熊本大学)。「『どちりな きりしたん』におけるキリシタンの救済観の一考察」『人間文化研究』19号(2021年)他多数。
平戸市生月島博物館・島の館学芸員
中園 成生(なかぞの しげお) 氏
『かくれキリシタンの起源《信仰と信者の実相》』(弦書房、2018年)他多数。
長崎大学多文化社会学部教授
木村 直樹(きむら なおき) 氏
『長崎奉行の歴史 苦悩する官僚エリート』(角川書店、2016年)他多数。
天草市観光文化部文化課主任
中山 圭(なかやま けい) 氏
「天草下浦石の歴史と海を介した流通」『遺跡学研究』14号(2017年)他多数。
東京大学史料編纂所准教授
岡 美穂子(おか みほこ) 氏
The NambanTrade: Merchants and Missionaries in 16th and 17th Century Japan (Brill, 2021)他多数。
本学文学部史学科世界史学専修准教授
四日市 康博
本学文学部史学科世界史学専修教授
小澤 実
詳細情報
名称
内容
「シンポジウムの射程:海老沢有道の遺産をふまえて」
13:15~13:45 報告1:鶴島 博和 氏
「天草灘とキリシタン-海からの視点」
13:45~14:15 報告2:児島 康子 氏
「幕府における寛政期・文化期の天草の位置づけ」
休憩
14:30~15:00 報告3:中園 成生 氏
「長崎県下かくれキリシタン信仰地域の生業構造」
15:00~15:30 報告4:木村 直樹 氏
「長崎からみた天草-分断と連帯」
休憩
15:45~16:00 考古学の視点:中山 圭 氏
16:00~16:15 キリシタンの視点:岡 美穂子 氏
16:15~16:30 ユーラシアの視点:四日市 康博
16:30~17:00 総合討論