「禍(わざわい)」と図書館

図書館の窓

2021/04/16

トピックス

OVERVIEW

2019年秋の台風19号により、甚大な被害を受けた各地の大学図書館のニュースを記憶されている方も多いでしょう。紙媒体を保存する図書館にとって、自然災害による水や火、破損は大敵ですが、過去の経験から予防策や復旧事例も蓄積されてきました。
しかし今般の新型コロナウイルス感染症の拡大は、かつてない経験をもたらす「禍」として社会全体に降り掛かりました。図書館も4月初旬から休館を余儀なくされましたが、いかにこの禍と対峙し、サービスを再開して現在に至るかをご紹介します。

開館の現状

これまで多くの学生が利用し活気に満ちていた図書館は、4月の緊急事態宣言を受けて約2カ月間、異様な静けさに包まれました。6月以降、感染症対策(マスク着用、手指・館内消毒、入館人数制限等)を講じた上で、学生および教員の学習・研究を支えるべく段階的にサービスを再開してきました。7月には予約入館制を維持しながら、毎日の来館と最大7時間半の長時間滞在も可能となり、徐々に本来の図書館らしさが戻ってきました。

学修支援サービスの面では、対面で実施していたラーニング・アドバイザーによるレポート作成相談の代替に、メール相談(ASKサービス)を5月末より、オンライン相談(Zoom利用)を7月中旬より開始しました。自宅から多くの学生が利用しており、いまでは学修支援の重要な柱の一つとなっています。

また、秋学期開始とともに、閲覧席やPC席でオンライン授業(一方向型)を受講できる環境を整備し、図書館での新たな学習スタイルも生まれました。

郵送貸出サービス利用者に向けた発送準備

来館が難しい学生への支援策としても、論文やレポート作成に必要な図書資料の郵送貸出サービスを7月以降定期的に実施しています。

通常利用に戻るまで、来館・非来館を問わず、学生・教員を最大限サポートするため、可能な限りの環境維持とサービスの工夫・拡充を行っていきます。

電子リソース

こうした対応と並行して、緊急事態宣言の前から電子リソースのサービス拡大にも努めてきました。3月上旬には一部オンライン資料の同時アクセス数を拡張、3月末には図書館Webサイト上に特設ページ「家でも使える図書館(新入生、在学生、就活生向け)」を公開し、学外からでも活用できるサービス情報をいち早く提供しました。4月上旬には各学部へのアンケート調査に基づき、国内新聞、レファレンスデータベースなど各種コンテンツの同時アクセス数を拡張、リモートアクセス環境の整備を行い、特設ページにて随時公開しています。

初の試みとなったオンライン授業への対応についても、早期から準備を進めたこと、また複数の出版社からオンライン資料の同時アクセス数拡張が一定期間無償提供されるなどのサポートが得られたことから、4月末までに整備が完了し、授業開始とともに多くの学生に活用されました。5~7月のアクセス数は大幅に増加し、前年比3倍を超えたコンテンツもありました。

図書館では臨時予算措置も行いつつこれらのサービスを実施してきましたが、2021年度以降もさらなる環境整備・改善を行っていく予定です。コロナ禍を機にオンライン資料の利便性が注目されつつありますが、学生全体の認知度をさらに高めるべく、今後一層の周知を図っていきます。

貸出カウンターの待機列はソーシャルディスタンスに配慮

利用できる席とできない席を設けた閲覧スペース

館内各所に消毒液を設置

PCヘルプデスクでは担当者によるリモート対応を実施

終わりに

既存の流れを一変させる事象を指す「ゲームチェンジャー」という言葉があります。コロナ禍をそう捉えるのも善し悪しですが、図書館で検討の俎上そじょうにあったサービス群が、怒涛どとうのように展開されていったのも事実です。

「災いを転じて福となす」「禍福は糾える縄の如し」と言うように、「災」や「禍」と「福」が表裏一体であるならば、この禍の流れを大きく福へとゲームチェンジしていきたいと考えています。大学図書館は現在、これまでにない転換点に立っているのかもしれません。

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