書評 『加賀屋 笑顔で気働き —女将が育んだ「おもてなし」の真髄』

元 観光学部観光学科特任教授 玉井 和博

2016/04/02

トピックス

OVERVIEW

元 観光学部観光学科特任教授 玉井 和博氏による書評です。

“合わせ水”と“花嫁のれん”この二つの言葉こそ、正に本書の底流にある、女性の覚悟と心意気、そして世界から賞賛される“日本のおもてなし”その
最先端を行く能登・加賀屋女将・真弓さんの人となりそのものを表した言葉ではないでしょうか。
 
「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選で35年連続日本一」は、後にも先にも加賀屋以外には有り得ない偉業でしょう。 “社員は家族”、“お叱りこそ財産”・・・先代より受け継いだ加賀屋流おもてなしの精神を一心に我が物とすべく、日夜精進する女将の姿こそが現在ある加賀屋の本質なのでしょう。 お客様の目を見、言葉をとおし、息づかいを感じながら、お客様と接する、そしてお客様の感動する姿に喜びを感ずることこそ、接客業の醍醐味です。

ややもすれば合理的・効率的経営手法を標榜する欧米的経営から批判を受けかねないこの“日本的おもてなし”。 しかし加賀屋では「接客係はお客様と接する事こそ本来の仕事!!」と、既に1970年代にはバック部門に「料理自動搬送システム」を導入し、接客係の本来の業務以外の負荷を減らす「ハイテクとハイタッチ」この両立を目指した合理的経営を取り入れていたのです。

ご主人である禎彦氏(現・相談役)をはじめとした経営幹部そして社員全員の思いこそが“変えるべきは変え、残すべきは残す”という伝統継承の本質「伝統は革新の積み重ね!!」をいち早く実践していたことは驚嘆すべきことです。
 
本書は女将・真弓さんの姿をとおし日本一加賀屋のそして“日本的おもてなし”の本質を余りなく表現されたものです。観光立国を標榜する日本の価値とは・・・。 “おもてなし”の意味のみならず“働く”ことの本質を考える上でも、観光学部の学生諸君は勿論、これから社会に巣立つ若者達に是非一読いただきたいものです。
書籍情報
■日本経済新聞出版社
■256ページ
■1,500円+税

※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

CATEGORY

このカテゴリの他の記事を見る

トピックス

2024/11/25

立教大学の英語名「St. Paul's」から「RIKKYO」...

写真で見る立教いま・むかし

お使いのブラウザ「Internet Explorer」は閲覧推奨環境ではありません。
ウェブサイトが正しく表示されない、動作しない等の現象が起こる場合がありますのであらかじめご了承ください。
ChromeまたはEdgeブラウザのご利用をおすすめいたします。