X線の観測装置を開発しブラックホールの謎に迫る
理学部物理学科 山田 真也 准教授
2022/07/07
研究活動と教授陣
OVERVIEW
宇宙X線観測衛星の開発、X線観測装置の開発、およびそれを用いた高エネルギー宇宙物理学の研究に取り組んでいます。
多くの銀河の中心には巨大なブラックホールが存在しています。ブラックホールの周辺には、飲み込まれつつある物質が渦を巻いて円盤状になっています。そこでは、温度が1億〜10億℃という超高温になっており、水素やヘリウムだけでなく、鉄やアルミといった金属も全てガス状のプラズマとして存在しています。そしてブラックホールに落ち込む瞬間、断末魔のようにエネルギーを解放し、強力電磁波であるX線を放射するのです。そのX線を観測することが、ブラックホールの成り立ちや構造を明らかにする手掛かりになると考えています。
ブラックホールのイメージ 提供:NASA
実験時のTESの外観写真
宇宙から飛来するX線は地球の大気に吸収され、地表には届きません。そのおかげで生物はX線が及ぼすダメージから守られているのですが、そのX線を観測するには、観測装置を人工衛星に搭載し、大気圏外まで運ぶ必要があります。私は現在、JAXAが主導しているX線分光撮像衛星「XRISM 」プロジェクトに参画し、精密X線分光撮像装置の開発を担当しています。次世代の精密X線分光観測に向けた「超伝導転移端検出器(TES:Transition Edge Sensors)」の開発にも取り組んでいます。大気圏外での使用を前提に開発を進めてきましたが、地上でも優れた性能を発揮することから、さまざまな応用が可能です。近年では、素粒子の一種であるミュオンの原子形成過程の解明に寄与するなど、極小の世界を扱う原子核研究の分野でも成果を上げました。また、TESは精密な分光により微量元素の検出が行えるため、レアアースの埋蔵量調査の共同研究が進んでいます。さらに超伝導の技術は量子コンピュータへの応用が期待されています。いずれもすぐに実現できるものではありませんが、5年、10年先の社会に貢献できればという気持ちで研究を続けています。
※本記事は季刊「立教」260号(2022年4月発行)をもとに再構成したものです。バックナンバーの購入や定期購読のお申し込みはこちら
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プロフィール
PROFILE
山田 真也
2006年東京大学理学部物理学科卒業、2011年同大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理化学研究所基礎科学特別研究員、首都大学東京理学部物理学科宇宙物理実験室助教を経て、2020年より現職。