知を究める、多彩な研究活動
── 豊かな社会の創造を目指して
2019/05/10
研究活動と教授陣
OVERVIEW
立教大学は、イギリスの教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(TimesHigherEducation/THE)が実施する「THE世界大学ランキング2019」において、総合で国内14位(私立大学では3位)、研究影響力を示すCitations(引用)のスコアで6位を獲得しました。世界的な大学ランキングで高い評価を受けた「研究力」をテーマに、幅広い領域で展開する個性豊かな研究活動と、その成果を教育や社会に生かす取り組みを紹介します。
幅広い領域で特色ある研究を推進する、32の研究機関等
理学部と現代心理学部による文理融合型研究
研究・教育の両面で本学の存在感を高め、研究成果を積極的に社会に還元することで大学の社会的使命を果たします。新たな分野の開拓にも取り組み、研究力の更なる高度化、活性化を目指します。
1⃣ 32の研究機関等の活動概要
ESD研究所 Research Center for Education for Sustainable Development
ESDは「EducationforSustainableDevelopment(持続可能な開発のための教育)」の略称で、「持続可能な社会の担い手を育てる教育や学習」のことです。日本の提案で始まった「国連ESDの10年」(2005~2014年)以降、国際的に取り組まれています。本研究所の前身であり、日本初のESD研究機関として2007年に設置されたESD研究センターはこの10年を推進する国内外の「ハブ」機能を果たし、多様なステークホルダーをつなぐESDの実践的研究を進めてきました。ESDは2015年の国連持続可能な開発目標(SDGs)の中に盛り込まれ、SDGs推進のエンジンとして注目され、その成果が期待されています。
現在、本研究所が最も力を入れているのが「ESDによる地域創生」研究です。少子高齢化・過疎化は日本の持続可能性を脅かす課題の一つです。各地の自治体※などと連携し、ESDによる地域創生や持続可能性指標の開発などに取り組んでいます。また地元池袋西口においても、町内会や商店街などの方々と一緒に地域づくりを推進しています。
※北海道羅臼町や長野県飯田市、長崎県対馬市、静岡県西伊豆町、他
左/国際シンポジウム「ESDによる地域創生の可能性と今後の展開」(2017年11月) 右/としまグリーンキッズプロジェクトの様子(2018年7月)
社会との協働を重んじ、さまざまな公開イベントを実施しています。池袋西口エリアにおける持続可能な地域社会の在り方を探る「風土かふぇ」を定期開催するほか、2018年11月には公開講座「SDGs教育フォーラム@トヨタ白川郷自然學校」(11月4~6日)、ESDと地域創生をテーマとした公開講演会「全国ESD自治体フォーラム」(11月28日)などを開催しました。
キリスト教教育研究所 Japan Institute of Christian Education ( JICE)
公開講演会「現代の死を巡る諸相─ちいさな風の会の30年─」 (2018年12月1日)
キリスト教教育研究所(JICE)は、キリスト教の人間理解と行動諸科学に基づいて、社会と自らに対して責任ある主体として生きる人間を育むことを目的として1962年に設立されました。キリスト教教育の観点から、学部学生を対象とした沖縄や長崎へのフィールドトリップを開催し、また独自の視点で地域づくりに取り組む自治体の首長を招いた研究会の開催や公開講演会・シンポジウムを通して研究成果を社会に還元し、キリスト教教育の発展のみならず、幅広い分野で、地域社会・教会・教育機関などへの貢献を目指しています。
ウエルネス研究所 Rikkyo Research Institute of Wellness
上/太極拳講習会 下/クライミング講習会
本学の建学の精神である「キリスト教に基づく人間教育」を土台に、「人が 豊かに生きるとはどういうことか」をウエルネスの切り口から探究するウ エルネス研究所です。ウエルネスは、WHO(世界保健機関)の示す健康の 定義をより積極的かつ多次元的に捉えた健康観で、一般的にはQOL(クオ リティ・オブ・ライフ)を追求する活動とされています。研究所では、総 合大学としての強みを生かし、運動、スポーツ、福祉、教育、医療、宗教、 心理といった多彩なアプローチからウエルネスに関する総合的・学際的な 研究を推進し、学生や地域社会に寄与しています。また、ウエルネスに関 連するさまざまな講習会や講演会を開催しています。
平和・コミュニティ研究機構 Rikkyo Institute for Peace and Community Studies
出版記念講演会『祖国が棄てた人びと』(明石書店)(2018年11月22日)
「平和」は常に人類が希求してやまない課題ですが、今日の世界は平和への新たな挑戦に直面しています。平和・コミュニティ研究機構では、地域社会から地球社会に至るまで多層的に形成されたコミュニティと、政治、安全保障、経済、社会、福祉、歴史、文化の構造やダイナミズムを分析。学内外の研究者との連携のもとで分野横断的な共同研究を展開しながら、平和実現のための政策を探り、提言することを目指しています。また、学部の全学共通科目および大学院科目の提供も担い、多様な分野の公開講演会を通じ大学内外で議論を深めるとともに、Webサイト等を介して若手研究者を支援しています。
各機関による担当科目・講座
ジェンダーフォーラム「立教ゼミナール発展編2 (ポスト高度成長期の子育てネットワークとジェンダー)」
アジア地域研究所 「 演芸の世界」
平和・コミュニティ研究機構 「 グローバル社会での平和構築」
ラテンアメリカ研究所 「ラテンアメリカ講座」
2⃣ 理学部生命理学科×現代心理学部心理学科 文理融合型研究
変化の激しい現代社会の中で、人々のストレスは増大しています。2016(平成28)年度文部科学省「私立大学研究ブランディング事業」に選定された本プロジェクトは、ココロとカラダにさまざまな影響をもたらすストレスを、生命科学と心理学の2つの側面から追究する学際融合研究です。ストレスに対する分子・細胞レベルの解明を行うとともに、メンタルヘルス問題が発現するメカニズムを心理学的に探究。「ストレスをココロとカラダから科学する」ことで、包括的な理解と新たな知見を得ることを目指しています。
2018年度の成果公開等
入門セミナー8月1日・23日
左/理学部生命理学科 後藤聡教授 右/現代心理学部心理学科 大石幸二教授
立教大学のオープンキャンパス期間中、池袋・新座キャンパスで、受験生とその保護者を対象とし、研究内容や目指す成果について分かりやすく説明するセミナーを開催。生命科学および心理学グループの教員が、「ストレスによっておこる脳内物質の変化」や「心理学から見たストレスの理解」などを解説し、融合研究の意義を伝えました。
公開講座12月4日
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター・認知症支援推進センター 研究員 宮前史子 氏
外部講師と本学教員による講座を開催しました。「認知症を持ちつつも、サクセスフルに生きるには」という視座から、認知症や健康長寿とストレスの関係、本事業における取り組みなどが語られました。
2019年度春学期に、全学共通科目「ストレスから考える私たちの健康」を開講
担当者:現代心理学部心理学科 大石幸二 教授 他
本事業の教育への還元として、2019年度春学期に、全学共通科目総合系科目として「ストレスから考える私たちの健康」を新座キャンパスで開講します。ストレスが人のココロにどんな作用をもたらすのか、分子・細胞レベルではカラダに何が起きているのか。文理融合研究の意義や成果を紹介しながら、健康について考える機会を提供します。
授業テーマ例
●ストレスと心理学・生命理学の視点
●ストレスと脳
●ストレスと免疫
●ストレスと精神的問題
●家族とストレス
●観光とストレス:旅行がもつ癒しの力 等
研究紹介
生命科学 グループ バクテリアが人の心にもたらす作用とは?
人体に100兆個以上存在するというバクテリア(細菌)。近年、このバクテリアがストレスや神経系の疾患などのメンタルヘルスにも影響を与えることが明らかになってきました。バクテリアの専門家である塩見准教授は、腸内細菌と自閉スペクトラム症の関係を解明する研究に取り組んでいます。疾患を持つ子どもとその家族の腸内細菌叢(細菌の集合体)を比較分析し、発症に至るメカニズムを探求。理学グループと連携しながら、大腸菌の生態を知る研究を、メンタル面を含めた「人間の生態」を知る研究へと応用しています。
心理学 グループ ストレスが人の認知機能に及ぼす影響とは?
見る、聞く、触る、考える、記憶するといった人の認知機能は、ストレスによってどんな影響を受けるのか。認知心理学を専門とする浅野准教授は、ストレス状況下で複雑な作業を行った場合の作業効率の変化について研究しています。具体的な手法としては、「ストレス度合い」と「作業の行いにくさ」を測定し、両者の関係を検証していきます。ストレスの程度測定については、唾液中に含まれるストレスホルモン」と言われるコルチゾールの量などを調査。理学部との協働がより精密な分析を可能にし、共同研究によって新たな成果を生み出しています。
※本記事は季刊「立教」246号(2018年11月発行)をもとに再構成したものです。定期購読のお申し込みはこちら
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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