どう変わる、どう変える 英語の指導と学習
経営学部国際経営学科 松本 茂 教授
2018/05/16
研究活動と教授陣
OVERVIEW
2020年度からスタートする、「大学入学共通テスト」。外国語科「英語」では、民間の資格・検定試験との併用により4技能(聞く・読む・話す・書く)を総合的に評価する方向で検討が進んでいます。こうした大学入試改革の背景、およびこれからの英語学習の在り方について、文部科学省や大学入試センターの委員を務めている経営学部の松本茂教授に伺いました。
※文部科学省「大学入試英語成績提供システムへの参加要件を満たしている資格・検定試験とCEFRとの対照表について」資料より抜粋(2018年3月)
立教大学では、2016年度入試から全学部で4技能型の英語資格・検定試験を活用したグローバル方式を導入しています。大学入試センター試験や他の大学の入試が英語4技能を評価する方向へと舵を切ろうとしているのはなぜでしょうか。
文部科学省は、以前から高校の英語の授業において「4技能を統合的に指導すること」「英語で授業を展開すること」などを求めています。しかし、現在の大学入試センター試験をはじめ、ほとんどの大学入試問題が読解中心であるため、高校教員からは「大学入試が変わらないと授業を変えられない」という声が上がっていました。
この矛盾を解消するためにも大学入試を4技能化していこうとしているのです。大学としても、グローバル化を推進するには、4技能すべてにバランスの良い英語力を有している学生が欲しいわけです。
そのような背景があり、立教大学は全国の大学に先駆けて、全学部全学科で民間の4技能型の英語試験を入試に活用し、「4技能バランスの良い英語力」を備えた生徒を育ててほしいというメッセージを高校に向けて発信したのです。立教が珍しく1番に仕掛けました(笑)。
多様な文化の人たちと共に生き、働くことが当たり前の環境になりつつあるいま、卒業後も英語力が仕事や人生の可能性を広げてくれることは言うまでもありません。英語力が弱いためにチャンスを失うという事態は避けたいですからね。
そうしたグローバルに活躍できる人材を育成するために、世界から学生が集まるキャンパスにするには、日本人学生が英語を学ぶのではなく、英語で学ぶことに、日本の大学も力点を置く時代になりつつあります。そのためにも4技能に長けた高校生を受け入れることが重要です。
文部科学省は、以前から高校の英語の授業において「4技能を統合的に指導すること」「英語で授業を展開すること」などを求めています。しかし、現在の大学入試センター試験をはじめ、ほとんどの大学入試問題が読解中心であるため、高校教員からは「大学入試が変わらないと授業を変えられない」という声が上がっていました。
この矛盾を解消するためにも大学入試を4技能化していこうとしているのです。大学としても、グローバル化を推進するには、4技能すべてにバランスの良い英語力を有している学生が欲しいわけです。
そのような背景があり、立教大学は全国の大学に先駆けて、全学部全学科で民間の4技能型の英語試験を入試に活用し、「4技能バランスの良い英語力」を備えた生徒を育ててほしいというメッセージを高校に向けて発信したのです。立教が珍しく1番に仕掛けました(笑)。
多様な文化の人たちと共に生き、働くことが当たり前の環境になりつつあるいま、卒業後も英語力が仕事や人生の可能性を広げてくれることは言うまでもありません。英語力が弱いためにチャンスを失うという事態は避けたいですからね。
そうしたグローバルに活躍できる人材を育成するために、世界から学生が集まるキャンパスにするには、日本人学生が英語を学ぶのではなく、英語で学ぶことに、日本の大学も力点を置く時代になりつつあります。そのためにも4技能に長けた高校生を受け入れることが重要です。
今後必要な英語力とは。
これからは「発信する英語力」を身に付けてほしいですね。受け身の授業が中心の日本の中学・高校と比較し、欧米の授業では、頻繁に議論が行われています。日本では英語の能力が高い人でも会議で議論に参加できないケースがしばしば見受けられます。これは単に英語力がないだけでなく、そもそも議論する文化に慣れていないことの表れでしょう。
議論するということは実に人間らしい活動です。相手から質問されたり、立場が異なる人の意見を聞いたりすることで、自分の視野がいかに狭いかということに気付くなど、互いに学び合うことができます。こうしたインタラクティブな活動を恐れずに英語で行い、結果として英語を身に付けてほしいですね。そこで期待されることの一つが「ディベート」による論理的な思考訓練です。経営学部には、「Argumentation and Debate」というディベート関連の選択科目があります。
ディベートと聞くと難しいイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。ディスカッションと違って、立場が決まっていますし、論点を整理する有能な司会者も必要ありませんから、日本の中学生でも英語でできます。与えられた自分の立場「賛成」「反対」から、第三者(聞いている人たち)を説得するように論理立てて発言すれば良いのです。ディベートを通して身に付く、批判的に考えて論理的に話す力は、グローバル社会でのコミュニケーションに不可欠なのです。
議論するということは実に人間らしい活動です。相手から質問されたり、立場が異なる人の意見を聞いたりすることで、自分の視野がいかに狭いかということに気付くなど、互いに学び合うことができます。こうしたインタラクティブな活動を恐れずに英語で行い、結果として英語を身に付けてほしいですね。そこで期待されることの一つが「ディベート」による論理的な思考訓練です。経営学部には、「Argumentation and Debate」というディベート関連の選択科目があります。
ディベートと聞くと難しいイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。ディスカッションと違って、立場が決まっていますし、論点を整理する有能な司会者も必要ありませんから、日本の中学生でも英語でできます。与えられた自分の立場「賛成」「反対」から、第三者(聞いている人たち)を説得するように論理立てて発言すれば良いのです。ディベートを通して身に付く、批判的に考えて論理的に話す力は、グローバル社会でのコミュニケーションに不可欠なのです。
生涯学習としての英語の効果的な学び方はどのようなものでしょうか。
英語に限らず外国語ができると選択肢が増え、生活や働く場、体験できることの幅が広がっていきます。また、これまでは英語が不要とされてきた職場や地域でも異文化の人と接することが増えているほか、インターネットを介したビジネスチャンスがどんどん広がっています。
英語を身に付けたいのであれば、英語そのものを学ぶのではなく、自分に必要なこと、または好きなことを英語で学ぶと良いでしょう。海外旅行が好きな人であれば、外国の観光地情報を英語で入手すれば単語や表現も覚えやすいように、まずは英語で何をしたいのかという「目的」を明確にすることが重要です。
仕事中は難なく英語でのコミュニケーションがこなせるにもかかわらず、その後のパーティーでは黙ってしまうという日本のビジネスパーソンも多いようです。スポーツや映画、日本文化なども英語で話せるようにしておくことが、ビジネスでも求められています。
思考するためには言語が必要です。そして、言語が豊かになればそれだけ思考力も向上します。高校までの英語教育の課程で、大学の授業で、英語で学ぶにふさわしい英語力を身に付ける。そして、大学では英語そのものを学ぶのではなく、英語で教養を身に付け、専門分野を英語で学ぶようになると思います。
英語を身に付けたいのであれば、英語そのものを学ぶのではなく、自分に必要なこと、または好きなことを英語で学ぶと良いでしょう。海外旅行が好きな人であれば、外国の観光地情報を英語で入手すれば単語や表現も覚えやすいように、まずは英語で何をしたいのかという「目的」を明確にすることが重要です。
仕事中は難なく英語でのコミュニケーションがこなせるにもかかわらず、その後のパーティーでは黙ってしまうという日本のビジネスパーソンも多いようです。スポーツや映画、日本文化なども英語で話せるようにしておくことが、ビジネスでも求められています。
思考するためには言語が必要です。そして、言語が豊かになればそれだけ思考力も向上します。高校までの英語教育の課程で、大学の授業で、英語で学ぶにふさわしい英語力を身に付ける。そして、大学では英語そのものを学ぶのではなく、英語で教養を身に付け、専門分野を英語で学ぶようになると思います。
松本教授の3つの視点
- 高校の英語教育を変えるためにも、大学入試が変わる
- 大学では英語で教養を身に付け、専門分野を英語で学ぶ
- 何のために英語を学ぶのか、学びをどう生かすのかを明確にする
※本記事は季刊「立教」244号(2018年4月発行)をもとに再構成したものです。定期購読のお申し込みはこちら
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観光学部 羽生 冬佳教授
プロフィール
PROFILE
松本 茂
NHKテレビ「おとなの基礎英語」講師(2012 ~ 2017年度)、日本ディベート協会事務局長、一般社団法人全国高校英語ディベート連盟副理事長、文部科学省、中央教育審議会、東京都教育庁などの各種委員会の委員を務めている。