イベントレポート「納得のいく進路ってなんだろう?~キャリアから考える学部選択とこれからの高校生活~」

立教大学キャリアセンター

2020/12/17

キャリアの立教

OVERVIEW

2020年11月20日(金)、キャリアセンター主催で高校生を対象としたキャリア支援イベントを開催しました。高校生の皆さんが、大学進学やその後の就職にとどまらず、自分自身の生涯にわたるキャリアの可能性に気づくきっかけとなることを目的として企画されたものです。ここではその模様をお伝えします。

本日は「納得のいく進路って何だろう?キャリアから考える学部選択とこれからの高校生活について」というテーマでお話しします。
キャリアや学部選択というワードを聞くと堅苦しい・難しいというイメージを持つ人がいるかもしれませんが、今日はそんなに難しい話はしません!ぜひ楽しみながら参加してください。

①学部の選び方

「学部ってどう選べば良いの?」「将来やりたいことがわからない!」こういう人は結構いるのではないでしょうか。

本日のプログラムのポイントは「学部選択のヒントを得る!」「これからの過ごし方で重要なことを知る!」この2点です。

はじめに学部選択の仕方について。まずは将来やりたいことが明確な場合について見ていきましょう!
皆さんイメージできると思いますが、明確な場合は将来やりたいこと、就きたい仕事と関連のある学部を選択するというのが1つの方法です。
例えば、弁護士になりたい人は法学部、翻訳家になりたい人は異文化・国際系の学部、会計士・税理士になりたい人は経済学部といった形です。

それでは、将来やりたいことが不明確な人はどうすればよいのでしょうか。「親に言われたから」「友達が行くから」「なんとなく就職に有利そうだから」…こうした理由で選ぶのはNGです。なぜ適当に学部を選んではいけないのか。その理由として、社会の変化に注目する必要があります。

②社会の変化

皆さんは終身雇用、年功序列、新卒一括採用といった言葉を耳にしたことはありますか?簡単に説明すると、終身雇用は、企業に入ってから退職するまでずっと雇ってもらえるというもの。年功序列は、スキルや能力にかかわらず、一定の時期になると昇進して、年齢の高い人が高い給料をもらえるというもの。新卒一括採用は、大学生の間に就職活動をして、卒業後の4月からみんな一斉に社会人として働き始めるというものです。

これらの制度は、日本独自の雇用制度と言われるもので、今までの日本では長い間続いてきた当たり前のシステムでした。皆さんのお父さん・お母さんの世代にはなじみのあるものです。

しかし最近では、日本の大企業や経団連のトップが「終身雇用を守るのは難しい」と公の場で発言しています。社会が変化する中で、長い間、当たり前だと思われていた日本型雇用制度についても、変化が生じているのです。
次に、少し視点を変えて企業が採用をするときに何を重視しているのかを見てみましょう。
2018年度に「選考にあたって企業が重視したポイントのランキング」が公表されました。主体性やチャレンジ精神、協調性といった項目が挙げられていますが、第1位は何だと思いますか?正解はコミュニケーション能力です。

日本の採用方式は「メンバーシップ型」と呼ばれています。仕事ができるポテンシャル、つまり潜在能力がありそうな人材を採用します。そして、会社に入った後に仕事を振り分けていくという仕組みになっています。

そのため、このランキングのように、特定のスキル、例えば、英語や簿記といったものよりも、コミュニケーション能力や主体性といったポテンシャルが重視されているのです。
日本のメンバーシップ型の採用は、実は日本独自のもので、欧米など多くの国ではジョブ型という、その時その会社に必要な能力・スキルを持った人を雇うといった採用方式がとられています。そして近年は日本の大企業でもジョブ型を導入する企業が出てきていて、この流れは今後も加速すると言われています。

つまり、皆さんがこれから進んでいく社会は、これまでとはまったく異なるものになるかもしれないということです。だから、自分の身近なこと、今興味がある事だけに目を向けるのではなく、社会の変化にも目を向けるということが大切です。
まとめると、学部選択のポイントは「自分なりに将来を見越した学部選択が重要になる!」です。

もしかしたらみなさんの周りの大人の中には、「学部なんてどこでも良いんだよ」「就職と学部なんてまったく関係ない」という人がいるかもしれません。でも、それはその人の時代の話で、社会は日々変化しています。皆さんがこれから歩んでいく未来とは違います。

大学の4年間でどんな学びをしたいのか?どんな知識・能力をつけたいのか?将来の社会はどうなるのか?
自分なりにしっかりと将来を見越して学部選択をしないと、これからの社会を生き抜くのは難しいということはぜひ覚えておいてください。
それではここからは、学部選択の具体的な方法について解説していきたいと思います。

これは立教大学の公式Webサイトのページです。このサイトには単に大学や学部の紹介をするのではなく、自身の興味から学部を探すことができるという仕組みがあります。
例えば、映像、メディア、英語、異文化、食文化、インタビュー、いじめ、家庭問題などです。

これらのキーワードをクリックすると、それに関連する学部を教えてくれます。つまり、普段からみなさんが持つ興味の分野から学部を絞り込むことができるということです。

大学で何を学びたいのかわからない、将来やりたいことがわからないという人でも、身近なキーワードを選ぶことならできますよね。
キーワードをクリックすると、例えば、「映像・メディア・創作」のキーワードに紐づく学部として社会学部メディア社会学科や、現代心理学部映像身体学科のほか、実は文学部や異文化コミュニケーション学部も、「映像・メディア・創作」に関連しているという新たな発見があるかもしれません。

「英語・国際・異文化」のキーワードでは、異文化コミュニケーション学部のほかにも、実は文学部だったり、経営学部、GLAPでも学ぶことができます。人間の仕組みという切り口では理学部のほか、コミュニティ福祉学部や現代心理学部なども関連しています。
このように、自分の持っている学部や学科のイメージではなく、自身の興味から調べてみると思わぬ学部との出会いがありしますし、自身の興味から調べているので入学後のミスマッチも少なくなります。ぜひ一度試してください。

また、自分の適性から学部を選択するという方法もあります。
例えばマナビジョン、スタディサプリ、進路のミカタといった企業のサービスでは、簡単な自身に関するアンケートに回答すると、自分の興味の分野や、向いている学部、仕事というのが分かります。家族や友達と一緒にやってみて、結果を共有してみるというのもなかなか面白いですよ。

ではここでいったんまとめです。
現段階で将来やりたいことが決まっていなくても大丈夫!自分の興味・関心があるものを見つけて、そこから選んでみましょう!それが先ほどのまとめにもあった、自分なりに将来を見越して学部選択するということにもつながります。 

③自己決定の大切さ

突然ですが、みなさんにクイズです。「所得」「学歴」「自己決定」のうち、人の幸福度に最も影響をおよぼすものはどれでしょう?正解は自己決定です。なぜ自己決定が人の幸福度につながるのでしょうか?

2018年に神戸大学と同志社大学の教授が発表した研究を紹介します。国内2万人に対するアンケート調査の結果、所得、学歴よりも「自己決定」が幸福感に強い影響を与えていることが明らかになりました。
ここでいう自己決定とは、「中学から高校への進学」、「高校から大学への進学」、「初めての就職」について、自分の意思で進学する大学や、就職する企業を決めたか否かを指しています。
自己決定によって進路を決定した人は、自らの判断で努力することで目的を達成する可能性が高くなり、また、成果に対しても責任と誇りを持ちやすくなることから、達成感や自尊心により幸福感が高まることにつながっていると考えられるとのことです。

今の説明を踏まえると、学部選択においても自己決定が重要と言えます。 自分で学部を選択することにより、4年間の学びのモチベーションが高まるだけでなく、目標を達成する可能性も高くなると言えるでしょう。

皆さんはまだ高校生なので、人生や将来の生活について考えることは少ないかもしれませんが、まずは高校卒業後の学部選択を自己決定するということが、実は、今後のより良い人生やキャリアというものにつながっていくということを覚えておいてください。

④これからの高校生活の過ごし方

ここからは、皆さんの目の前にあるこれからの高校生活という点にフォーカスを当てて話をしていきます。

皆さんの高校生活においても、いろいろと選択をしなければならない場面がありますよね?
例えば「文系・理系の選択をどちらにするか?「「選択科目は日本史にするか、世界史にするか?」「部活でこれまで通りの練習メニューを続けるか、新しいメニューにするか?」など、高校生には高校生なりのさまざまな選択の場面があると思います。

その際、「ついつい、友達がそうしているから」「親に言われたから」「先輩がそうしてきたから」などと、周りに流されてしまう人もいるかもしれませんが、これまでの説明で一緒に見てきた通り、これはNGです。
高校生活においても、やはり自己決定は重要です。
自分自身のより良い人生、キャリアのためにも、高校生のうちから自己決定するという習慣を付けてもらいたいと思います。

自己決定の重要性については、ここまで何度も取り上げたので理解してもらえたと思います。
ここで、これからの高校生活を送るみなさんにもう1つ覚えてほしいことがあります。それはキャリアの理論で「計画された偶発性理論」というものです。

この理論は簡単に言うと、キャリアの8割は偶然で決まるというものです。
キャリアに満足している人はこの偶然を積極的に作り出し自身の可能性を広げている。というものです。

「キャリア」と聞くと、真剣に真剣に考えて、自分の力のみで決めるものというイメージがあるかもしれませんが、実は8割も偶然で決まっているのです。少し驚きですよね。ただ、ここで伝えたいのは、適当に過ごせば良いよということではなく、その偶然を「積極的」に作り出すことが大事ということです。
そして、この理論には続きがあるのですが、偶然を積極的に作り出すために必要なものとして「好奇心」「持続性」「楽観性」「柔軟性」「冒険心」この5つの行動指針を持つことが重要です。
また、将来のことを完全に分かる人はこの世にはいないので、見通しのない将来に不安を抱きすぎないことも重要です。これはまさに、コロナ禍で見通しのない今の社会にこそ言えることかもしれません。

是非みなさんもこの5つの行動指針を持って、目の前の授業や課外活動などに取り組んでほしいと思います。

ちなみに、今の理論の、偶然を積極的に作り出すって具体的にどういうこと?と思った人いるのではないでしょうか?そうした方のために、例えば立教生だったらどのようにして偶然を作り出せるのかということを紹介しますね。

まずは学部間の垣根が低い。
立教大学は他の大学に比べて圧倒的に学部間の垣根が低く、他学部の授業もたくさん履修でき、専門外の新たな学問を自らの選択次第で積極的に学ぶことができます。こうして立教生は偶然を積極的に作り出すことができます。
もう一点、都心で学べる。
首都圏のキャンパスで学ぶと、キャンパス外でもさまざまな経験をすることができます。色々なイベントが毎日のように開催され、博物館、美術館、映画館も至るところにあります。書店ひとつとっても、絵本だけを置いている専門店など、都心だからこそできる経験やチャンスというものは確実にあります。  

実際、地方企業や県庁や市役所などの人事の方からも、「東京で4年間過ごし、さまざまな視点を持った学生が欲しい」という声を聞くことが多くあります。単純に「コロナだから」、「地元に就職するから」といった理由で、東京の大学を選択肢から除外してしまっていいのか?という点は改めて考えてみてもよいかもしれません。
最後に1点だけ補足をさせてください。
今日の話を聞いて、学部選択が将来を決定的に確定させてしまうと認識してしまった人がいるかもしれません。確かに、学部選択は自身の将来やキャリアを考えるうえで重要なのですが、実際にはどの学部でも、どんな業界にでも就職しています。
例えば、文学部でも教員ではなくIT系企業で働くことはできますし、観光学部でも、旅行・ホテル業界ではなく、金融業界で働くこともできます。

ですので、学部選びは将来のことを自分で選ぶことがまず一番大事といえます。そうすれば、将来進路が変わっても納得して勉強を続けられます。
学部選択はたしかに大学4年間や今後のキャリアを考えるうえで非常に重要なのですが、「学部=就職先ではないよ」ということは覚えておいてもらえればと思います。

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