研究室を訪ねて
経済学部経済政策学科 菊池 航 准教授
2022/06/23
立教卒業生のWork & Life
OVERVIEW
経済学部経済政策学科の菊池航准教授は、1998年に立教中学校に入学して以来、高校、大学、大学院と一貫して立教で学んでこられた校友です。
高校時代に簿記の資格を取り、公認会計士を目指していた
中学に進むとき、自宅から通いやすく自分の学業レベルにも合っていた立教中学の受験を決めました。それに加え私は幼稚園からずっと野球をやっていて、父親が長嶋茂雄氏(昭33営)の大ファンだったんですね。なので息子に同じ立教大野球部の縦縞ユニフォームを着てもらいたい、という願望があり、それに応えるためという動機もあったかもしれません。実際に中学から野球部に入ったんですがとてもレベルが高く苦労しまして、高校になって軟式から硬式に変わったところで退部してしまいました。代わりにゴルフを始めたり模索しましたが、手に職をつけるため学業に注力しようと決めて簿記の勉強を始め、高3で簿記1級の資格を取りました。その流れで大学は経済学部を選び、将来は公認会計士を目指していたんです。
大学の先生って自由で面白いかも、と現在の道へ
「立教出身の教員として、現役学生とOB・OGの橋渡しに尽力したい」と菊池先生
そこから研究者・教員の道に進路を変えた理由は2つあります。1つは高校生の時。高校と大学の一貫連携教育のひとつとして、大学の先生が授業に来てくださっていたんですが、型にはまらない感じが面白かったんです。特に今も大学の兼任講師をされている古典の安原眞琴先生(平6日前)の授業がとても印象的でした。授業で忠臣蔵を学んで、これを現代風にアレンジして脚本を作ってみんなで演じてみよう、なんてことを提案したりする破天荒な先生だったんです。「教育や学びって、もっと自由でいいんだ」と感じ、大学の先生が魅力的に思えた出来事でした。もう1つの理由は、大学の経済学部に入ってからですね。1年生の基礎ゼミナールで須永徳武先生の授業を受けたことで、研究者の道に進もうかな、という思いを強くしました。須永先生は経営史がご専門で、それを学ぶうちに私の中で自動車産業史に興味を持ち、この分野をもっと研究したい、と思うようになったからです。
大阪で過ごした2年間は貴重な経験だった
大学院のあとも研究を続け、博士となった2016年から2年間は大阪の阪南大学で准教授を務めました。大阪の中でも下町っぽさが色濃く残る土地で、自分以外は教員も学生もほぼ関西人、というアウェイな環境で戸惑いもありましたが、学生はみんなフレンドリーで距離感が近く、また初めて自分のゼミを持つなど、とても有意義な時間を過ごすことができました。その後立教に戻って准教授となり現在に至ります。一度外の環境に出たおかげで、改めて本学の恵まれた研究環境や学生の真面目さなどの特徴を再認識することができ、とてもいい経験だったと思っています。
日本の自動車産業の強みと歴史、そして今が研究テーマ
『立教OBOGの社長の履歴書』の授業風景。対面で行われていた際は、いつも大勢の学生で教室が埋まっていました
自動車産業は日本の主要な産業のひとつで、戦後日本経営史研究において注目されている分野です。トヨタ自動車を中心としたさまざまな先行研究・調査があるので、それを学びながらいかに新しい論点や研究テーマを見つけるかという難しさはあります。何もわからないジャンルを開拓するのではなく、多数の研究者と切磋琢磨しながら研究を進めていく、という分野だと思います。
1980年代に日本の自動車産業が国際競争力を発揮するようになり、それはなぜなんだ、とアメリカで国際比較研究がされるようになり、日本の研究者もアメリカに留学して共同研究する時代がありました。その後、そこでわかってきた特徴が歴史的にどう形成されてきたのかというフェーズに入り、私の研究はそこに位置付けられるのかなと思います。
具体的には、日本の自動車産業の競争力の強さはメーカーとサプライヤーの強固な結びつきや新車開発の速さ、委託生産と呼ばれる最終組み立てを行う企業との関係など多くの論点があります。それらの論点について現状はどうなっているのかをヒアリング調査したり、どんなプロセスで形成されていったかの歴史研究や、エンジンからEV化が進む中でどう変化していくのかなどの研究を行っています。
1980年代に日本の自動車産業が国際競争力を発揮するようになり、それはなぜなんだ、とアメリカで国際比較研究がされるようになり、日本の研究者もアメリカに留学して共同研究する時代がありました。その後、そこでわかってきた特徴が歴史的にどう形成されてきたのかというフェーズに入り、私の研究はそこに位置付けられるのかなと思います。
具体的には、日本の自動車産業の競争力の強さはメーカーとサプライヤーの強固な結びつきや新車開発の速さ、委託生産と呼ばれる最終組み立てを行う企業との関係など多くの論点があります。それらの論点について現状はどうなっているのかをヒアリング調査したり、どんなプロセスで形成されていったかの歴史研究や、エンジンからEV化が進む中でどう変化していくのかなどの研究を行っています。
立教OB・OGの現役社長を招いた講義が大人気
現在私は自分のゼミや産業経済論などの授業に加えて全学共通科目である「立教OBOGの『社長の履歴書』」という科目を担当しています。これは本学OBでサンヨー食品株式会社代表取締役社長であり経済学部の客員教授、そして校友会の副会長も務められている井田純一郎氏(昭60産)と私が共同で担当している講義で、立教OB・OGの現役社長を年間12人招き、大学時代をどう過ごしたか、起業した経緯や会社経営の難しさ、どんな人材がこれからの社会には必要か、大学時代に何をどのように学ぶべきかなど、さまざまな論点について立教の先輩として話してもらうという授業です。卒業生である経営者がざっくばらんにいろいろなお話をしてくださるし、質問もできる。自分と同じ学校に通っていた人たちが悩みながら会社で活躍されていくプロセスを聞くことで、学生にとっては他人事のような社長像とは違う、自分にもできるかもしれないというエールや勇気を与えてもらえるような話が多いんです。経営の話だけでなく、人間的な部分に触れられることがとても貴重で学生からも高い評価を得ており、定員200人に対して受講希望者が例年3倍以上殺到する人気の授業です。
私は自身の産業経済論の授業で産業や企業経営について学生に教えていますが、どうしても理論を中心に語ってしまい、現実を知らないところがあります。その意味で「社長の履歴書」は私にとっても多くの学びがありますし、教員としてOB・OGと在学生をうまくつなげられる存在になりたいと思います。また、私のゼミもまだ2期生を送り出したところですので、これからも社会で活躍し、いずれは母校へ良い影響をもたらしてくれるような人材を輩出できるよう努力していきます。そしていつか母校の中学高校で授業を持つなど、一貫校との連携に少しでも役立てるといいな、と思います。
文/野岸泰之 撮影/増元幸
私は自身の産業経済論の授業で産業や企業経営について学生に教えていますが、どうしても理論を中心に語ってしまい、現実を知らないところがあります。その意味で「社長の履歴書」は私にとっても多くの学びがありますし、教員としてOB・OGと在学生をうまくつなげられる存在になりたいと思います。また、私のゼミもまだ2期生を送り出したところですので、これからも社会で活躍し、いずれは母校へ良い影響をもたらしてくれるような人材を輩出できるよう努力していきます。そしていつか母校の中学高校で授業を持つなど、一貫校との連携に少しでも役立てるといいな、と思います。
文/野岸泰之 撮影/増元幸
※本記事は『立教大学校友会報458号(2022年5月発行)』をもとに再構成したものです。詳細はこちら
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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プロフィール
PROFILE
菊池 航
同経済学部助教、阪南大学経営情報学部准教授を経て、18年4月より現職。
菊池 航(研究者情報)