「ミスター立教」がきっかけで俳優の世界へ
思いがけない人生と立教での学び——
俳優 大野 拓朗さん
2019/03/01
立教卒業生のWork & Life
OVERVIEW
スラリとした長身にさわやかな笑顔。そのルックスと明るいキャラクターが人気の俳優・大野拓朗さんは、2009年「ミスター立教」に選ばれたことが契機となり芸能の道に進んだ。
高校卒業後、立教へ。08年に新設されたコミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科の1期生だ。
「サッカーやバレーボールのW杯、フィギュアスケートなど、世界中の人がスポーツイベントを心待ちにし、熱狂している。スポーツの力はすごいと感じていました。将来はスポーツの世界で活躍するアスリートのサポートをしたい。そのための勉強がしたくて受験しました」
入学し、すぐにでもスポーツを専門的に学びたかったものの、実は、1、2年次に履修した学部共通の福祉に関連する科目が、その後とても役立っているという。
「俳優はしょうがい者を演じることもあります。実際、北九州市の人権啓発映画『秋桜の咲く日』(14年)という作品でアスペルガー症候群の青年の役を演じました。このときは大石和男教授(コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科)の研究室を訪ねて相談に乗っていただき、とても参考になりました」
「サッカーやバレーボールのW杯、フィギュアスケートなど、世界中の人がスポーツイベントを心待ちにし、熱狂している。スポーツの力はすごいと感じていました。将来はスポーツの世界で活躍するアスリートのサポートをしたい。そのための勉強がしたくて受験しました」
入学し、すぐにでもスポーツを専門的に学びたかったものの、実は、1、2年次に履修した学部共通の福祉に関連する科目が、その後とても役立っているという。
「俳優はしょうがい者を演じることもあります。実際、北九州市の人権啓発映画『秋桜の咲く日』(14年)という作品でアスペルガー症候群の青年の役を演じました。このときは大石和男教授(コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科)の研究室を訪ねて相談に乗っていただき、とても参考になりました」
俳優スカウトオーディション「キャンパスター★H50」グランプリ獲得時
とはいえ、立教入学当時の大野さんは、芸能界入りなど考えたこともなかったという。1年次のとき、広告研究会から「ミス・ミスター立教コンテスト」にスカウトされたが、「派手なことは得意じゃないし、勉強に集中したい」と断った。しかし、翌年もまた熱烈なラブコールが。
「代表の方から『4年次の私に来年はない。大野くんが出てくれないと一生後悔する!』と言われて。そこまで自分に熱い思いを持ってくれているなら応えよう、と。大学時代の思い出が作れるなら、という軽い気持ちでした」
そのコンテストで「ミスター立教」に選ばれ、同じく思い出作りのつもりで出場したのが、ホリプロが50周年を記念して開催した俳優スカウトオーディション「キャンパスター★H50」だった。これが大きな転機となる。「合宿で演技レッスンがありました。お芝居なんて学芸会以来だったのですが、とても楽しく、その奥深さの虜になりました。俳優の仕事をしてみたい。そう思うようになったのです」
「代表の方から『4年次の私に来年はない。大野くんが出てくれないと一生後悔する!』と言われて。そこまで自分に熱い思いを持ってくれているなら応えよう、と。大学時代の思い出が作れるなら、という軽い気持ちでした」
そのコンテストで「ミスター立教」に選ばれ、同じく思い出作りのつもりで出場したのが、ホリプロが50周年を記念して開催した俳優スカウトオーディション「キャンパスター★H50」だった。これが大きな転機となる。「合宿で演技レッスンがありました。お芝居なんて学芸会以来だったのですが、とても楽しく、その奥深さの虜になりました。俳優の仕事をしてみたい。そう思うようになったのです」
情熱と努力が実を結び 憧れのミュージカルの舞台へ
最終選考で見事グランプリを獲得し、映画『インシテミル~7日間のデス・ゲーム~』(10年)でデビュー。テレビドラマにも出演するなど映像の仕事が増えていく中、勉強のためと足を運ぶようになったミュージカルに心を奪われる。
「舞台の上でイキイキと演じる役者たちの姿、それに涙する観客たち……。なんてすてきな世界だろうと幸せな気持ちになりました。エンターテインメントの力を目の当たりにしたんです」
「舞台の上でイキイキと演じる役者たちの姿、それに涙する観客たち……。なんてすてきな世界だろうと幸せな気持ちになりました。エンターテインメントの力を目の当たりにしたんです」
2017年、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で初めてロミオを演じる 撮影:田中亜紀 写真提供:『ロミオ&ジュリエット』製作委員会
中でも心をわしづかみにされたのが、11年初演のミュージカル『ロミオ&ジュリエット』。
「なんなんだこの舞台は!と衝撃を受けて。僕もこの舞台に立ちたいと憧れました」すぐにCDを買い、移動の車の中では欠かさずに流して一緒に歌った。その翌年、大野さんは『エリザベート』でミュージカルの初舞台を踏む。
しかし、「歌が全然ダメでした。プロの歌い手たちが素晴らしいパフォーマンスをする中で、自分は全くその域に達していなかった」と、当時の悔しさをにじませる。またミュージカルの舞台に立つ日が来るならば、別人のように成長した姿を観客に見せたい──。その思いで、「世界で一番大好きなミュージカル『ロミオ&ジュリエット』」の歌を愚直に練習し続けた。
「なんなんだこの舞台は!と衝撃を受けて。僕もこの舞台に立ちたいと憧れました」すぐにCDを買い、移動の車の中では欠かさずに流して一緒に歌った。その翌年、大野さんは『エリザベート』でミュージカルの初舞台を踏む。
しかし、「歌が全然ダメでした。プロの歌い手たちが素晴らしいパフォーマンスをする中で、自分は全くその域に達していなかった」と、当時の悔しさをにじませる。またミュージカルの舞台に立つ日が来るならば、別人のように成長した姿を観客に見せたい──。その思いで、「世界で一番大好きなミュージカル『ロミオ&ジュリエット』」の歌を愚直に練習し続けた。
その努力と情熱は5年後、実を結ぶ。再演(17年)のオーディションに呼ばれた。演出を『エリザベート』と同じ演出家の小池修一郎が担当していたのだ。大野さんの成長に驚き、こう言ってくれたという。「本当に君が歌っているのか?アフレコかと思ったよ」。
憧れのロミオ役に抜擢された大野さんは「運と縁を感じました」。しかし、決して運と縁に恵まれただけではなかったということは、自身が一番強く感じている。「準備をし、自分を成長させていれば、チャンスが来たときにつかむことができる。逆に準備を怠っていれば、どんな機会も逃してしまう。努力し続けることこそ大切なのだと思っています」
憧れのロミオ役に抜擢された大野さんは「運と縁を感じました」。しかし、決して運と縁に恵まれただけではなかったということは、自身が一番強く感じている。「準備をし、自分を成長させていれば、チャンスが来たときにつかむことができる。逆に準備を怠っていれば、どんな機会も逃してしまう。努力し続けることこそ大切なのだと思っています」
立教時代の幅広い学び、経験に何一つとして無駄はない
テレビでも活躍が続く。18年は朝の連続テレビ小説『わろてんか』で、お調子者ながらやがて関西のお笑い界を背負って立つ芸人・舶屋キースを人情味たっぷりに演じた。大河ドラマ『西郷どん』では、西郷隆盛の腹心で「人斬り半次郎」の異名をとった剣豪の薩摩藩士、中村半次郎(のちの桐野利秋)役で好評を博した。
「三枚目寄りのキースは僕のキャラクターに近かったですね。対して半次郎はクールで、でも勇猛果敢で豪快。男が惚れる男のかっこよさを意識しましたし、演じてみて自分の中にもそういう一面があったんだなと。新しい発見でした」剣の達人である半次郎を演じる上では、幼いころに習っていた剣道に加え、立教での学びも役に立った。
「メディカルトレーナーになりたくて解剖学や運動生理学を積極的に学んでいたのですが、ここを動かすと関節はこう動く、体重をこちらに乗せるなら足はこっちへ、といった具合に身体の動きを論理的に理解できました。そのおかげで殺陣の覚えが早かったみたいです」そして、笑顔でこう続けた。「大学で勉強したことは社会に出て役に立つことばかり。幅広い学びができるカリキュラムがあるのは、さすが立教だなぁと感謝しています」
12月には世界初、南極からの4K中継のレポーターを務め、現在は自身初の再演となる『ロミオ&ジュリエット』の稽古が大詰めを迎えるなど、挑戦が続く。「役者として積んできた経験、努力を生かして、パワーアップしていきたいですね。目指すのはエンターテイナーです」。最後に後輩たちにこうメッセージを送った。
「大学時代は人生でもっとも自由な時間。何をしても無駄な経験はないけれど、立教というとても恵まれた学び舎にいるのだから、深い学びにつながるように自分で自分の人生を設計しながら進んでいってほしいですね」
「三枚目寄りのキースは僕のキャラクターに近かったですね。対して半次郎はクールで、でも勇猛果敢で豪快。男が惚れる男のかっこよさを意識しましたし、演じてみて自分の中にもそういう一面があったんだなと。新しい発見でした」剣の達人である半次郎を演じる上では、幼いころに習っていた剣道に加え、立教での学びも役に立った。
「メディカルトレーナーになりたくて解剖学や運動生理学を積極的に学んでいたのですが、ここを動かすと関節はこう動く、体重をこちらに乗せるなら足はこっちへ、といった具合に身体の動きを論理的に理解できました。そのおかげで殺陣の覚えが早かったみたいです」そして、笑顔でこう続けた。「大学で勉強したことは社会に出て役に立つことばかり。幅広い学びができるカリキュラムがあるのは、さすが立教だなぁと感謝しています」
12月には世界初、南極からの4K中継のレポーターを務め、現在は自身初の再演となる『ロミオ&ジュリエット』の稽古が大詰めを迎えるなど、挑戦が続く。「役者として積んできた経験、努力を生かして、パワーアップしていきたいですね。目指すのはエンターテイナーです」。最後に後輩たちにこうメッセージを送った。
「大学時代は人生でもっとも自由な時間。何をしても無駄な経験はないけれど、立教というとても恵まれた学び舎にいるのだから、深い学びにつながるように自分で自分の人生を設計しながら進んでいってほしいですね」
Coming Soon
【Stage】ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
2019年の再演は、2月23日(土)から、東京・愛知・大阪の3都市を予定。
潤色・演出:小池修一郎
出演:古川雄大/大野拓朗(Wキャスト)葵わかな/木下晴香/生田絵梨花(トリプルキャスト)ほか
潤色・演出:小池修一郎
出演:古川雄大/大野拓朗(Wキャスト)葵わかな/木下晴香/生田絵梨花(トリプルキャスト)ほか
【Movie】『Bの戦場』
ラブコメディ小説を映画化。2019年春公開予定。
監督:並木道子
出演:よしこ(ガンバレルーヤ)/速水もこみち/大野拓朗ほか
監督:並木道子
出演:よしこ(ガンバレルーヤ)/速水もこみち/大野拓朗ほか
※本記事は 季刊「立教」247号(2019年1月発行) をもとに再構成したものです。 定期購読 のお申し込みはこちら
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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「挑戦なくして成長なし」を信条に途上国専門商社を起業。日本と...
株式会社RAISE WORLD代表取締役 白川 直史さん
プロフィール
PROFILE
大野 拓朗 さん
2012年、コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科卒業2010年、立教大学在学中に映画『インシテミル〜7日間のデス・ゲーム〜』で俳優デビュー。2018年は連続テレビ小説『わろてんか』、大河ドラマ『西郷どん』など話題作に相次いで出演。舞台では、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』(17)、『エリザベート』(12 /共に小池修一郎演出)、『ヴェニスの商人』(13 /蜷川幸雄演出)など、日本を代表する演出家の作品が並ぶ。
2018年12月1日、NHK BS4K/8K開局スペシャルで世界初の南極中継を担当。待機作に映画『Bの戦場』など多数控える。
http://www.horipro.co.jp/ohnotakuro/